介護のきっかけとしてよく見かけるのが入院です。高齢者が入院すると、入院のストレスからせん妄状態に陥ることが多く、介護の必要性を家族が感じることも少なくありません。入院中は、看護師が入浴や排泄を介助してくれますが、家族も手伝う場面が増えるでしょう。多くの場合、一通りの治療が終わると、国の医療費節減政策によって、完治しなくても早期退院を促され、自宅療養に入ることになります。入院中介護が必要だった高齢者が、退院後も介護を要することになるのは当然です。このように、入院中に介護のきっかけができて、そのまま在宅介護に移行する事例が珍しくありません。退院するまでに、利用できる介護サービスを調べておくなど、退院後の生活について考えることが大切です。
※退院後の生活のヒント⇒考えておくべき退院後【介護の入り口】

その一方、家庭に戻って体力が回復すると、家族に負担をかけるのを嫌がり、自力で生活しようとする高齢者もいます。家庭内に手すりやトイレへの動線などを確保できたら、何とか自力で生活できるという高齢者もいるでしょう。しかし、こうした場合に気を付けなければならないのは、家庭内事故です。階段からの転落といった家庭内事故は後を絶たず、年間で600人以上の死者を出しているのです。その犠牲者の大半は高齢者と言えるでしょう。転倒により骨折すると、その後急速に弱って要介護者になる事例も少なくありません。転倒事故が介護のきっかけになるケースも非常に多いのです。

また、環境変化が介護のきっかけになることもあります。配偶者に先立たれたり、子どもが独立して別居したりして、孤独な生活になると、認知機能が低下して要介護者になるのです。他者との交流があるうちは元気でも、孤立化により介護が必要になりうる点に注意しましょう。